大阪府大東市に本社を置く老舗AV機器メーカー、船井電機株式会社が、2024年10月24日に東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けました。負債総額は約461億円に達しており、かつては「FUNAI」ブランドで知られた同社が、厳しい経営環境に押しつぶされる形となりました。
かつてのトップシェアとその後の衰退
船井電機は、かつてテレビやビデオデッキ市場で高いシェアを誇り、低価格で高性能な製品を国内外で販売することで知られていました。特に、1990年代から2000年代にかけては、「FUNAI」ブランドのテレビが国内外で人気を博し、一時期は家電量販店の定番商品として多くの家庭に浸透しました。しかし、ここ数年の間に中国や韓国などの新興メーカーの台頭が著しく、価格競争に巻き込まれる形で業績が悪化していきました。
経営戦略の迷走と需要の減少
船井電機は2010年代後半以降、国内市場におけるシェア低下に苦しんでいました。特にテレビ市場においては、液晶パネルの技術革新や価格の急速な下落により、利益を上げることが困難になっていきました。同社はヤマダ電機と提携し、国内での独占販売契約を結ぶなどして事業のテコ入れを試みましたが、消費者ニーズの変化と低価格競争が重なり、十分な成果を上げられませんでした。
美容業界への進出と失敗
2023年には、船井電機が新たな事業領域として美容業界に進出し、脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を買収しました。これはAV機器に頼らない収益源を確保するための多角化戦略でしたが、予想以上に運営コストがかさみ、短期間で売却に至るという結果に終わりました。これにより、さらなる資金不足が生じ、経営危機が加速したとされています。
上場廃止と最終的な破産申請
船井電機は、2024年9月に東京証券取引所の上場廃止が決定され、同時に社長が退任するなど経営陣の大幅な交代が行われました。しかし、事業再建の目途が立たず、資金調達の難航もあって、最終的に破産申請に追い込まれる形となりました。
今後の見通し
破産手続き開始後、船井電機は破産管財人の指導の下で資産整理と債権者への対応が進められる予定です。かつては「世界のFUNAI」としてAV機器業界をリードしてきた同社が、厳しい現実の中でどのように幕を閉じるのか、注目が集まっています。
船井電機の破産は、かつての日本の家電業界の栄華と衰退を象徴する一例となり、多くの人々にとって衝撃的なニュースとなっています。